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進撃の巨人 前編 わりと肯定的な感想

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「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 」2015年 日本 監督・樋口真嗣 脚本・渡辺雄介 町山智浩


まず初めに告白しておきます。

進撃の巨人、漫画原作は1巻目で挫折!(どーん)

アニメはOPの爽快さがとてもいいと思ったけれど、何故か本篇を観続けることができず、ようつべで立体機動装置でぶんぶん飛ぶシーンを編集したのを眺めるのみ!(どーん)

しかし、何故か2次創作ものは意外と目を通してたりする!(どかーん)

…はあっ、はあっ、とうとう言っちまったぜ…。そんな私の言うことだから、なんの説得力もない。しかし、ネットの感想を改めていろいろ読んでみて、この一言がすっごく言いづらい雰囲気になってるのを感じたので、ここであえて言っとく。

いや、よかったっすよ?この映画。

画像以下から、ネタバレまじえてどこがよかったか、だらだら感想をあげていくので、これからご覧になる方はここで回れ右してくださいませ。
尚、特撮好きな人で、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』が好きな方、昨年のハリウッド版ゴジラに驚き、来年の日本版ゴジラが気になってしょうがない方は是非観に行かれるべきだと思います。
特撮しょぼい、ハリウッドにやらせろって感想をいくつかお見かけしましたが、うーん?そう?CGだけに頼らない日本なりのやり方で、独自の発展を遂げてると思うけどなあ…?

あ、特撮好きな人向けに、パンフから一個だけネタバレ。巨人のひとりに、あの『電人ザボーガー』を撮った井口昇監督が入ってる!(どどーん)

イメージ 1



さて、ここからネタバレをまじえて、特撮面、ストーリー面から感想を。

まずは特撮面から。
ゆったりのそのそやって来て、わーいオヤツだとばかりにばくばく人間を喰いまくる巨人が、ほんと怖いです、はい。
冒頭のモンゼン地区人間踊り食いシーンで、え?私何処に逃げればいいの?って結構真剣に考えちゃったもん。最初に壁破られた時に自殺してた兵士がいたけど、ほんとその気持ちわかる。また、食べ方がきったないの。食いちぎっては手足が飛んで、内臓や血がべちゃっと降って来る。
特撮って、どうしてもこどものモノという考え方があって、それが表現に制限をかけたりするんだけど、こどもの目線を考えることをいったん止めて、グロい描写に特化したことで、巨人が居るこの世界の絶望感を存分に演出している。
でも、品がいいなと思うのが、食い散らかして内臓がはみ出てる遺体をあまりクローズアップせず、俯瞰で風景の一つとして見せるだけなんですよね。
これをアップでやっちゃってたら、スプラッターホラーの側面が強くなるので、そこは上手く一線を引いてる。
技術では、去年のハリウッドゴジラと比較して、そんなに遜色なかった気がするんですけど…どうなのかしら?チープだとかしょぼいみたいな感想聞くけど、本当にそうなのかなぁ?私が甘いのかな…。私は割合、驚かされやすいタチなので、自信がない。
ここは特撮技術をもっと見慣れてる先達の皆様に、ご意見を伺いたい処なのですが。
確かに巨人と怪獣では見せ方が全然違うので、一概に比較できるものではないのですが、私にはゴジラも巨人も、両方とも生きているように見えたんですよね(巨人は生きているというよりゾンビ的ですが)。
ゴジラはモーションキャプチャーのデータを元にしたフルCG。
巨人は人間や造型物を撮影した後、やはりCG処理でいろいろ足したもの。アプローチは違えども、その世界観の中でなまなましく見えたら、私はそれでOKだと思います。
ただ、冒頭の壁を破るきっかけとなったでかい巨人(CMで流れてる、あの筋肉むき出しのやつです)、あれも『巨神兵東京に現る』と同じ要領で撮影された造型物とのことですが、いろいろ煙や何やら足しすぎた結果、かえってフルCGぽく見えてしまっていたのが残念なところ。手作り感はちょっと残して欲しいとこなんですが…難しいリクエストかな(^^;?
立体機動装置での空中滑走は、やはり爽快感、カメラアングルの面白さからいくとアニメに敵わない。そりゃ敵うわけない。アニメは生身の人間を飛ばしてないんだから。
実写では生身の人間が実際に飛んだら…?という点にこだわって、シルク・ド・ソレイユが使っているのと同じワイヤーを製作。役者を実際に空中でぐりぐり回転させている。その分鈍重にはなったけど、人間がワイヤーで飛ぶリアリティは増したと思います。



そして、ストーリー・脚本面。いろんな感想を読むと、だいたい非難が集中しているのはこっちのよう。
原作との差違に関しては語れる立場にないので、そちらはスルー。

まずは初見でストーリーを理解して入り込めたか?という観点から。
割と私は「特撮作品」と言われるものを見ている方だと思うんだけど、脚本に関していえば、一連の「特撮作品」に不満な点があります。
それは設定が10あるとしたら、ほぼ8から9はどこかで説明してしまうところ。
せっかく決めた設定を全部わかってもらおうと、お客さんにぐいぐい説明を押し付けてくるのね。私はお話ってそういうものではないと思う。設定が10あるとして、3ぐらいをセリフで、3くらいをシークエンスで説明して、あとはお客さんに想像を膨らませてもらう。それが「いい脚本」だと思っているわけなのですよ。
この進撃の巨人は、その意味ではわりと「いい脚本」なんだと思う。
冒頭で説明されるのは、壁の外には巨人がいて大変ひどい目にあったので、人々は壁を作ってその内側に住むようになり、それから100年経ったということだけ。それなりに平和が保たれた壁内の狭い世界の中で、若者はくすぶっている。
あとは会話の端々や、舞台装置から、どんな世界観かが徐々に見えてくる。
人々の暮らしっぷりは15ー16世紀のヨーロッパみたいな雰囲気で、先進的な機械はみあたらない。かなり文明が後退している感じ。そのくせ、外を取り囲む壁にはヘリコプターの残骸などが引っかかっていて、不発弾もささってる。
なんで壁にヘリコプター…とも思うが、話が進むうちに壁の中の人間は、クメールルージュ並の厳しい統制下に置かれ、特に壁を破壊したり越えたり出来る技術や知識に関して、かなり厳しい制限を強いられていることがわかってくる。
空を飛ぶような機械は作れないし、火薬もまたしかり。防壁を守るのに必要な武器弾薬も、破られた壁の穴を埋めるのに必要な爆薬も、先人の残したものに頼る状態。さらに結婚も許可制になっていて、人口制限が敷かれていることを匂わせる。
もしかしたら100年前の人間も、ヘリコプターなどで壁の外に出ようとしたら撃ち落されてしまったのかも…しれない。

そして、主人公エレンの気持ちは壁の外に向いている。壁に区切られた小さな世界の中の退屈な平和に倦み、壁の外は本当に地獄なのか疑い、いつか外にあるという海を見たいと思っている。
そんな人々の不満が大きくなってきた時を狙ったかのように、外壁が破られ、巨人が侵入してきて人々を襲い、人々は外壁の中にあるさらに小さい壁の内での生活を強いられるようになる。
外壁の穴を塞ぎ、中に残った巨人達を掃討する作戦に志願したエレン。しかし、そんなエレンに対し、伝説の最強兵士とうたわれるシキシマは、お前は家畜になりたいのか?と問いかける。
NOと答えるエレンに対し、ならば飛べと、シキシマは言う。
飛んでどうしろというのか?巨人を倒すのか?それとも何処へいけというのか?壁の外か?政府の思惑は?壁の外にはなにがあるのか?
見ている客の想像がかきたてられ、膨らみます。
そして、最後に巨人とは何か?という1番大きな疑問が提示される事件が起きて、後編へ続きます。うまいなー!これは後編も観るしかないじゃないか!

次に、それぞれのキャラの立て方、絡ませ方に関しての観点を。これはかなりストレスがたまった。しかし、どうやらこれは、お客さんがイライラするのを狙ってやってるんじゃないかと思う。
人間関係は、泥臭くてぐちゃぐちゃ。極限状態の中で、食欲、
性欲、闘争本能むき出しのエレンの同僚兵士達。彼らは皆が皆、好きで巨人討伐に志願したわけじゃない。
いざ巨人を目の前にして、なんの役にも立たなかったり、エゴむき出しの行動に走って全員を窮地に陥れたり。あまりにうかつで統率のとれない兵士達。彼らは壁の中の家畜。目の前の本能を満たすことに夢中になってるうちに、巨人に捕食される。
正直見てる方は、かなりイライラする。エレンはその中で、いろいろな地獄をみる。
しかし、そのイライラがあってこそ、最後の事件(あえて『サンダ対ガイラ事件』と言ってしまおう!)で、すっごいスカっとしてしまう。それこそハンジと一緒に「こんなのはじめてぇ!」と叫びたくなるくらいに!

ただ、ひとつ難点があるとすれば、この脚本、役者陣なら、もう少し抑えた演技でもいいと思うのだけれど、割合わかりやすい芝居、演出になっちゃってる。
従来の「特撮作品」にありがちな、10代のこどもにもわかりやすい感情を出した芝居、演出(例えばミカサとシキシマの性的関係を匂わせるのに、リンゴという小道具を使ったりね)。
これは監督が、ずっとそっちの畑を歩いてきたが故だと思うのだけれど、せっかく特撮面では殻を破ったと感じていたただけに、惜しいところでした。

しかし、総合的にはかなり後編に期待しちゃう出来。やー、私は9月楽しみですよ!

ところで、この映画には「仮面ライダーオーズ」で主役を張っていた渡部秀君が出ているのですが、結構濃厚なラブシーンを演じてます。あらまー、オトナになったのねぇと、ちょっくら面映くて目を伏せてしまったのは、ここだけの話(^^;。

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