グレートアイ「人間は不確定な要素が多すぎる。コントロール不能で、なんと不合理な存在だ。消去だ」
ガンマイザーに乗っ取られたグレートアイは人型に変化、人間世界の破壊を始めた。マコトとアランは、タケルをグレートアイのもとへ行かせるために、雑魚との戦いを一手に引き受ける。
そこへ突然ブラックとパープル、ライトグリーンを基調にした、ポップなデザインの怪人が現れた!
マコト「誰だ?」
『シャカリキスポーツ!』
怪人の腰にあるドライバーのようなものをいじると、やはりショッキングピンクとライトグリーンのタイヤが鮮やかな派手なカラーリングの自転車が現れて、眼魔達をマイペースに自転車でなぐるわ、自転車に乗って蹴り飛ばすわ、やりたい放題。かってに『かいしんのいちげき』を眼魔に食らわせると、自転車でささっと逃走。その間わずか30秒弱。
マコト「……何なんだ、あいつは?」
アラン「……まさか仮面ライダー?」
マコト兄ちゃん、アラン様、突然のできごとに唖然呆然。次期仮面ライダーエグゼイドはオートバイではなくて、自転車に乗ってやってきた仮面ライダーゴースト49話、堂々の本編最終話感想!エグゼイドのチーフプロデューサーは大森さんか……仮面ライダードライブといい、あくまでも仮面ライダーをオートバイ以外のものに乗せたいですか、そうですか。
タケルを生き返らせるための最後の頼みの綱、グレートアイがガンマイザーと融合。アデルの負の感情やDEMIAの仕組みを学んだガンマイザーは、グレートアイの全知全能の力でもって、この世の人間全てを魂だけの存在に変え、吸収。みるみる膨れ上がっていきます。タケルは世界のために最後の戦いに臨みます。
最終回らしく、諸田監督の見せたい画をぎゅうっと。次作の宣伝の関係で、エグゼイドが通りすがったり、ナイトシーンでのバイクの疾走を見せたいがために、むりくりグレートアイの能力で昼夜逆転させたり、最後に仙人をたちあわせたいがために、なぜかイーディスのカプセルだけが眼魔世界でなく大天空寺の2階に置いてあったり、嬉し恥ずかしナリタとシブヤのパジャマ姿を拝見できたり、イゴールは御成のせいで、アカリに対する自分の感情をすっかり勘違いしたままだったり!
まあそんなツッコミどころは多々あれど、細かい設定よりビジュアル優先で、テーマをわかりやすく絞ってきた手腕はお見事。番組当初に宣伝されていた死の切なさではなく、生の喜びを最後にどどんと前に押し出してきました。
タケルが生き返ったシーンがオープニングそのままの画に繋がるところは、あっと言わされたし、締めの変身がオレ魂だったところも、ちょっとうるっともきちゃいましたよ。最後に馴染みの薄い最終最強形態をもってこられるより、初心に戻るほうが私は好き。1年間の集大成らしい最終回になりました。
グレートアイ「私には人間の力など効かない!」
グレートアイと融合したガンマイザーの力は圧倒的。タケルがムゲン魂でいくら必殺技を叩き込んでも、効かないどころか、グレートアイの一撃でタケルはビルの屋上に叩きつけられ、変身解除してしまう。
グレートアイは少年のようにあどけない声で、恐ろしい未来を予言した。
グレートアイ「そこで見ているがいい。人間の未来を」
グレートアイの身体はみるみる膨れ上がって、一つ目の巨人に。ビルの屋上にいるタケルを見下ろす程の大きさになった。
アラン「何なんだ、あれは?」
マコト「とにかく、あいつを倒す!」
地上からその様子をみていたマコト達は、無謀にもダブルライダーキックで巨人に突っ込む。しかし、巨人がかるく手を振り払っただけで、ふたりはやぶ蚊のごとく地上にはたき落とされた。
巨人が目からビームのようなものを出すと、街はみるまに破壊されていく。ビームに触れた人間達は青白い光の魂になって、巨人に吸収されていく。こどももおとなも、女も男も、キュビや音符眼魔のような眼魔たちも元眼魔だったジャベルも、みんな等しく魂だけの存在になって消えていく。
一方、ガンマイザーを作った張本人は、ダークゴーストになって戦うこともなく、情けなくも大天空寺の床下に潜り込んでぶるぶる震えるのみ。
ユルセン「変身して戦えよ!元はといえば自分のせいだろ!」
仙人「無駄な抵抗じゃ……ガンマイザーはグレートアイを取り込んだのじゃ……世界はおしまいじゃ……」
ユルセン「おい!そこ、入るとこじゃねえから!」
もそもそとさらに奥の方へ避難していく仙人の姿をみて、ユルセンあきれまくり。子供達がめげずにがんばってるんだから、ちったあ、オトナの矜持を見せんかい!!
そして、巨人のすぐ近くで、魂が吸い込まれていく様子を目の当たりにしたタケルも、仙人と同じく絶望。
タケルの身体に吸い上げられていく魂の幾つかがぶつかる。しかし、タケルにはどうすることもできない。
タケル「命が……思いが消えていく。思いが……未来が消えていく。ごめん、皆……俺は皆の未来を守れない。思いを繋げてあげられない……」
もう、こんな人間の未来をみたくない。思わず目を閉じたタケルの脳裏に、またあの声が聞こえてきた。
優しくタケルの名を呼ぶ女性の声。まさか、母さん?タケルは懐から、真っ赤な眼魂を取り出した。父さんが、己の魂の消滅と引き換えに授けてくれた闘魂ブースト。
その眼魂をみつめると、妊娠した大きなお腹を抱えた優しげな女性と、仲睦まじく寄り添う龍の姿が、タケルの脳裏に浮かび上がってきた。彼女は膨らんだお腹を愛しげになでている。
母親『お母さん、あなたが生まれるのが楽しみよ』
龍『なあ、男の子だったらタケルという名前はどうだ?』
龍は目を輝かせて、お腹の子の名前を提案する。我が子にもうすぐ会えるのが、楽しみで仕方がない様子。が、その幸せは長くは続かなかった。タケルを産み落としてすぐに、母親は病の床に臥せった。枕元で、龍は悲痛な面持ちで座っている。しかし、母親は笑っていた。最期の時でさえ、生まれたばかりのタケルの頬をなでて幸せそうに笑っていた。
母親『タケル……生まれてきてくれてありがとう』
母親の死を見届けたタケルの脳裏に、母の笑顔が焼き付いた。
タケルに母の記憶はない。もしかしたら、龍から生前の母のことを伝え聞いていたかもしれないけれど、それでも確証はなかった。自分を産み落として、すぐに亡くなった母。自分を産んだことが、母の体力を奪い、死に追いやったのかもしれない。そんな自分のことを、母は本当に愛してくれていたのか?タケルが抱えてきた不安を、母の笑顔が溶かしていく。
タケル「母さん、最後まで俺のことを……」
ふと気づくと、タケルのすぐそばに龍が立っていた。龍の魂は消滅してしまったはず。だから、これはタケルの心が創り出した幻。わかってる。でも話しかけずにはいられない。
タケル「父さん……俺、愛されていたんだね」
幻は頷いた。
タケル「俺、父さんと母さんの子供でよかった。これからもずっと……」
幻は再び頷くと、静かに消えていった。
タケルは確信した。
タケル「俺がここにいる事こそ、父さんと母さんの愛の証。その愛は……俺の中で生きている。愛は、命を生み出す奇跡の力だ」
愛する気持ちに反応したムゲン魂が、光り輝いた。
タケル「俺は思いの力を信じる。愛の力こそ、人間の無限大の可能性そのものだ!」
タケルの胸に、愛しい仲間達への想いが去来する。アカリ、御成、マコト、カノン、シブヤ、ナリタ、アラン……タケルはたくさんの人達の笑顔を力にして、光の巨人に突っこんでいった。
タケル「人間の想いの力を知らないお前に、本当の想いを……愛の力を教えてやる!」
ムゲン魂の最終必殺技、ラブボンバーが炸裂。日本語に直すと愛の爆撃機。愛が地球を救う。文脈上、意味としちゃ間違ってないが、カタカナ字面の破壊力半端なし。Gガンダム最終必殺技、ラブラブ天驚拳に通じるものがちょっとある。
果たして光の巨人は、ラブボンバーの前に消え去った。ムゲン眼魂もその役割を終え、タケルのもとから消え去った。
光の巨人が消えるのを見た仲間たちは、タケルのもとへ駆けつける。しかし、そこには巨人のコアになっていた、ガンマイザーに乗っ取られたままのグレートアイも倒れていた。グレートアイがゆっくり動き出した。が、マコトもアランも先程巨人に弾き飛ばされたせいで、ひどい怪我。まだ戦える状態ではない。
マコト「俺たちはタケルを信じている」
アラン「私達のぶんまで頼む!」
グレートアイの攻撃を英雄ゴーストたちが防ぐ中、全てを託されたタケルは懐からゆっくりオレ眼魂をとりだした。
タケル「俺は……いや人間は……何度でも立ち上がり、運命を切り拓く!」
タケルはゴースト・オレ魂に変身すると、今まで共に戦ってきた15人の英雄達とともに敵に向かって走り出す。仲間たちはタケルの最後の活躍を頼もしく見守った。
アカリ「自分より人のことばかり思いやって、何度も消えそうになったけど……」
御成「その度に強くなって、戻って来られた」
アカリ・御成・カノン・マコト・ナリタ・アラン・シブヤ「タケルは、私(俺)にとって英雄だ!」
そして英雄たちも戦いながら口々にタケルに最後の言葉を。怒涛の関智一ひとり大英雄祭もこれが最後の開催。
ムサシ「決して折れぬ心で!」
ロビン・フッド「お前の正義を貫け!」
ビリー・ザ・キッド「お前はお前らしく!」
フーディーニ「今こそ思いを解き放て!」
サンゾウ「これぞタケルの信念ー」
グリム「楽しさが無限大に広がる世界に!」
ツタンカーメン「タケルを信じて!」
ニュートン「今こそ力を合わせて戦おう!」
ベートーベン「攻撃の完全なるハーモニー♪」
ゴエモン「我らに負ける選択肢は無い!」
エジソン「コレガ、我ラノ見ツケタanswerデス」
ヒミコ「我らを束ねたその力!」
リョウマ「人の思いが繋がったどでかい力ぜよ!」
ベンケイ「我らも信じる道をゆく!」
ノブナガ「タケルとともに最後まで!」
微妙なところもあったけど、15人連続でよくぞ演じ分けきった!お疲れ様!15人の英雄達とタケルの攻撃のお陰で、ただでさえ弱っていたグレートアイの身体がよろめいた。
タケル「命を燃やし尽くして生きた英雄たちと、父さんやみんながいてくれる!俺も……命を燃やし尽くす!俺は俺を信じる!」
英雄達の身体が光り、空に浮かび上がった。英雄たちと気持ちをひとつにしたタケルは、ライダーキックでグレートアイに突っこんでいく。
グレートアイ「あり得ない!人間とは……」
タケル「命、燃やすぜ!」
キックはグレートアイに命中。グレートアイは大爆発を起こした。
そして、ガンマイザーの呪縛から解放されたグレートアイが炎の中から飛び出して、空に大きな光の曼荼羅を描き、15人の英雄ゴーストがそれを支えた。
タケルの身体が曼荼羅の中に吸い込まれていく。11話でカノンを生き返らせてもらった時と同じ。英雄ゴースト達の力を借りて、グレートアイとタケルは再びコンタクトした。
曼荼羅の中には、フレイヤが立っていた。どうやら彼女はグレートアイの意思を伝える憑坐(よりまし)のような存在だった模様。
フレイヤ「天空寺タケル、助けてくれてありがとう」
タケル「願いを聞いてくれる?」
フレイヤ「ずっと、あなたを見てきました。あなたは、私たちに近い存在に進化をしています。多くの魂が結合している、不滅の存在です。もはや生き返る必要などないでしょう?」
やはりタケルは既に神のような存在になっていた。何度も魂ごと消滅しかけた経験を通して、死に対して悟りをひらき、多くの魂の声をきき、人間の大切な感情をムゲン魂を通して理解し、両親の愛を実感することで自らがこの世に存在する意味を知った。
肉体を持たないのに消えることのなかったタケルは、既に魂が消滅する危機を乗り越え、死の恐怖に怯えることなく、永遠に若いまま、この世に実体に近いかたちで存在することができる。
しかし、タケルはそんな自分の状態を悲しんでいた。
タケル「俺は普通の人間に戻りたい。みんなとご飯が食べたいし、みんなと一緒に笑って、一緒に悩んで……みんなと一緒に生きたい」
タケルは神になんてなりたくない。一緒に年を重ねていきたい人達がいる。彼らと小さなことで喜んで、小さなことで泣いて。傍からみれば他愛のない幸せは、命が有限であるからこそ輝く。
フレイヤ「それが、あなたの望みなのですね?だとすると、私のやった事は……」
グレートアイは、眼魔世界の大帝アドニスの強い願いに共感して、誰も死なない理想の世界を叶える手助けをした。しかし、それは間違いだったのかもしれない。が、タケルは別の願いを叶えて欲しいと申し出た。
タケル「でも、頼みたいことは別のことなんだ!」
フレイヤ「生き返りたい……のではないのですか?」
タケル「ガンマイザーに消された人たちを元に戻してほしい。こっちの世界も、眼魔の世界も」
フレイヤ「壊された街も……ですか?」
タケル「ううん、それ以上のことは望まない」
フレイヤ「なぜです?」
タケル「自分たちでやるから。人間の可能性は無限大なんだ。命と人の思いが繋がって、未来をつくるんだ」
タケルは最低限のことしか願わなかった。アカリが物語中盤で提案したように、願い事を5つに増やして、あれもこれもとお願いすることだってできただろうに。自分の手ではどうにもならない人間の命だけを望んで、ゴーストのままでも存在できるタケル自身の命や、皆で力を合わせればできる街の復興は神頼みしないあたり、神の存在に近付いたタケルらしい。
フレイヤはにっこり笑った。
フレイヤ「分かりました。願いを叶えましょう」
フレイヤの姿が消え、いつの間にかグレートアイの声が、本来のあどけない少年のものに戻っている。街の中に、消えた人々が次々と戻って来た。タケルはグレートアイに礼を言う。
グレートアイ「人間もいいものですね。私も、人間の無限の可能性を信じてみたくなりました……。これは、お礼です」
タケル「お礼?」
タケルの前に金色に輝く人型が現れた。それは人のことを優先して、自分の命を欲張らなかったタケルへのご褒美。
グレートアイ「またいつの日か、近くて遠い未来に会いましょう」
グレートアイは羽根の生えた巨大な黄金色の眼球に姿を変えると、宇宙の彼方へ飛び去っていった。
すると、世界にまたもや変化が起きた。生き返ったキュビ達やユルセン、仙人達の姿が眼魂に変わって消え、眼魔世界のカプセルに眠る生身の肉体が、次々に目覚め始めた。キュビもちゃんと生身の人間に。
眼魔世界はきっとこれからが大変。今までいらなかった食料調達や、赤く染まった大気のクリーニングなど、問題は山積み。
しかし、皆が目覚めるのを見届けたアリアは笑顔になる。命さえあれば、きっと問題を乗り越えていける。大帝アドニスがそうしたように、新しく全てを一からやり直す。きっと大丈夫。
そして、なぜか仙人のカプセルは大天空寺に保管してあり、こちらの世界で仙人は目覚めることになった。
仙人「あれ、どうして体が元に戻ったんだ?そうか、グレートアイが消えて眼魂システムが機能しなくなったんだ!あっ、腰が!どうする、ユルセン?」
足元の太った猫が知るか!とでも言いたげににゃあと鳴いた。なんとユルセンは猫の魂の化身でした!あら可愛い。
仙人は年をとった生身の身体に戻って、その重い腰に少々当惑気味。そりゃ何百年も動かしてない身体じゃ節々も痛いだろうて。
そして、タケルにも変化が。グレートアイの置いていった人型にタケルが吸い込まれると、タケルもなんと生身の身体に戻った!同時に曼荼羅が消滅し、タケルは上空から落下。わ、せっかく生き返ったのにまた死んじゃう!と慌てるタケル。が、英雄ゴースト達がタケルの手をとって、しばしの空中遊泳を楽しむと、無事に地面へ着地させてくれた。
タケルに駆け寄り、生き返れたのかどうかを心配するアカリたち。が、すぐにタケルのお腹が盛大にぐーっと鳴って、皆を笑わせた。大丈夫!間違いなくタケルは生きてる!
タケル「俺……お腹がすいたー!」
大天空寺に戻ったタケル達を仙人とユルセンが出迎えた。
タケル「おっちゃん、ただいま!」
仙人「おかえり、タケル」
タケル「生き返った!」
仙人「よかったよかった。全てはわしの思惑通りじゃ」
アカリ「嘘だあ!」
なにをしれっと言ってんだか。眼魂システムが機能しなくなった以上、眼魔世界に戻ることもかなわんだろうし、これから仙人は大天空寺の食客として生きていくんだろうか。おっちゃん、あんたの作ったガンマイザーシステムが街をぶっ壊したんだから、とりあえず反省しろよ、反省。ユルセン猫は可愛いので、そのままのびのび大天空寺に居てもらってよし。
そしてタケルは。
御成「タケル殿、おにぎりですよ」
タケル「おにぎり!いただきます!」
御成が差し出したおにぎりに美味しそうにかぶりつく。198日ぶりのごはん。海苔をまいた質素なおむすび。口のなかに甘い米としょっぱい塩の味が広がる。さいっこーに美味い。きっとタケルはこの味を死ぬまで忘れない。
『人間は、いつ死ぬか分からない。でも、最後のその時まで……命、燃やすぜ!』
タケルは米粒とともに、生きている幸せを噛み締めた。
当初に示された目標どおり、15人の英雄と心を繋いで最後にタケルが生き返るという大団円でもって、物語は終幕。
不老不死は人類が望む不変の欲望。人々はそれを追い求め、時には少女の生き血をかき集めたり、人魚の肉と称されるインチキ肉を大枚をはたいて買い求めたり、猛毒の水銀を若返りの妙薬と信じて飲んだり。しかし、そこまで命懸けで追求していっても、現在に至るまでその夢は叶えられることはありません。
でも、不老不死ってそんなにいいものなの?
『仮面ライダーゴースト』では、不老不死を実現させた眼魔世界という架空の国を描くことで、永遠に続く命が実はそんなにいいものではないかもしれないよ、ということをわかりやすい語り口で示してくれました。
そして、完璧主義に近い理想を実現させようとすると、人々の多様なあり方をゆるさず、最終的には独裁国家社会を作っていくこともキチンと描いてくれました。
そして、主人公サイドでは、命とはどういうものなのかが、がっつり語られていきます。物語の中盤で、死という概念を知らなかったアランが、ふみ婆の死を通して、身近な人の死というものをどう捉えていくべきか視聴者に感覚的に理解させました。
そして、最後におにぎりを頬張るタケルの顔を最高に幸せそうに見せることで、生きていることの素晴らしさを理屈抜きで見せつけました。
生死の概念を理屈ではなく、感覚で子供達に伝えようとした試みは見事だったと思うし、たぶんそこは成功していたと思います。
しかし、全体の語り口をみると、後半は主人公の感情の流れがブツ切れになってしまったり、伏線を引っ張るタイミングと消化するタイミングがぐちゃぐちゃで、けっして上手なストーリーテリングであったとは言えません。また、ゴーストであるが故に、敵も味方も死んでは生き返りを繰り返し、命の重みを伝える物語のはずが、かえって軽くみえてしまったことも否めません。
たぶん1~2クールで、製作サイドが言いたいことはほぼ全てまとまってしまっていたので、後半3~4クールは蛇足だったのではないかと。改めて1年というスパンで物語を紡ぐことの難しさを考えさせられました。
ちょっとここらへんまだ考えがぐちゃぐちゃしているので、最終回特別編を見てから、もう一度まとめてみようかなと。生死に関わる物語なので、割合こちらも感想を言うのに慎重になっています。特別編って、毎年ただのおまけで終わらなくて、侮れない。見た後にがらりと本編に対する考え方が変わることもあるので、楽しみです。
ガンマイザーに乗っ取られたグレートアイは人型に変化、人間世界の破壊を始めた。マコトとアランは、タケルをグレートアイのもとへ行かせるために、雑魚との戦いを一手に引き受ける。
そこへ突然ブラックとパープル、ライトグリーンを基調にした、ポップなデザインの怪人が現れた!
マコト「誰だ?」
『シャカリキスポーツ!』
怪人の腰にあるドライバーのようなものをいじると、やはりショッキングピンクとライトグリーンのタイヤが鮮やかな派手なカラーリングの自転車が現れて、眼魔達をマイペースに自転車でなぐるわ、自転車に乗って蹴り飛ばすわ、やりたい放題。かってに『かいしんのいちげき』を眼魔に食らわせると、自転車でささっと逃走。その間わずか30秒弱。
マコト「……何なんだ、あいつは?」
アラン「……まさか仮面ライダー?」
マコト兄ちゃん、アラン様、突然のできごとに唖然呆然。次期仮面ライダーエグゼイドはオートバイではなくて、自転車に乗ってやってきた仮面ライダーゴースト49話、堂々の本編最終話感想!エグゼイドのチーフプロデューサーは大森さんか……仮面ライダードライブといい、あくまでも仮面ライダーをオートバイ以外のものに乗せたいですか、そうですか。
タケルを生き返らせるための最後の頼みの綱、グレートアイがガンマイザーと融合。アデルの負の感情やDEMIAの仕組みを学んだガンマイザーは、グレートアイの全知全能の力でもって、この世の人間全てを魂だけの存在に変え、吸収。みるみる膨れ上がっていきます。タケルは世界のために最後の戦いに臨みます。
最終回らしく、諸田監督の見せたい画をぎゅうっと。次作の宣伝の関係で、エグゼイドが通りすがったり、ナイトシーンでのバイクの疾走を見せたいがために、むりくりグレートアイの能力で昼夜逆転させたり、最後に仙人をたちあわせたいがために、なぜかイーディスのカプセルだけが眼魔世界でなく大天空寺の2階に置いてあったり、嬉し恥ずかしナリタとシブヤのパジャマ姿を拝見できたり、イゴールは御成のせいで、アカリに対する自分の感情をすっかり勘違いしたままだったり!
まあそんなツッコミどころは多々あれど、細かい設定よりビジュアル優先で、テーマをわかりやすく絞ってきた手腕はお見事。番組当初に宣伝されていた死の切なさではなく、生の喜びを最後にどどんと前に押し出してきました。
タケルが生き返ったシーンがオープニングそのままの画に繋がるところは、あっと言わされたし、締めの変身がオレ魂だったところも、ちょっとうるっともきちゃいましたよ。最後に馴染みの薄い最終最強形態をもってこられるより、初心に戻るほうが私は好き。1年間の集大成らしい最終回になりました。
グレートアイ「私には人間の力など効かない!」
グレートアイと融合したガンマイザーの力は圧倒的。タケルがムゲン魂でいくら必殺技を叩き込んでも、効かないどころか、グレートアイの一撃でタケルはビルの屋上に叩きつけられ、変身解除してしまう。
グレートアイは少年のようにあどけない声で、恐ろしい未来を予言した。
グレートアイ「そこで見ているがいい。人間の未来を」
グレートアイの身体はみるみる膨れ上がって、一つ目の巨人に。ビルの屋上にいるタケルを見下ろす程の大きさになった。
アラン「何なんだ、あれは?」
マコト「とにかく、あいつを倒す!」
地上からその様子をみていたマコト達は、無謀にもダブルライダーキックで巨人に突っ込む。しかし、巨人がかるく手を振り払っただけで、ふたりはやぶ蚊のごとく地上にはたき落とされた。
巨人が目からビームのようなものを出すと、街はみるまに破壊されていく。ビームに触れた人間達は青白い光の魂になって、巨人に吸収されていく。こどももおとなも、女も男も、キュビや音符眼魔のような眼魔たちも元眼魔だったジャベルも、みんな等しく魂だけの存在になって消えていく。
一方、ガンマイザーを作った張本人は、ダークゴーストになって戦うこともなく、情けなくも大天空寺の床下に潜り込んでぶるぶる震えるのみ。
ユルセン「変身して戦えよ!元はといえば自分のせいだろ!」
仙人「無駄な抵抗じゃ……ガンマイザーはグレートアイを取り込んだのじゃ……世界はおしまいじゃ……」
ユルセン「おい!そこ、入るとこじゃねえから!」
もそもそとさらに奥の方へ避難していく仙人の姿をみて、ユルセンあきれまくり。子供達がめげずにがんばってるんだから、ちったあ、オトナの矜持を見せんかい!!
そして、巨人のすぐ近くで、魂が吸い込まれていく様子を目の当たりにしたタケルも、仙人と同じく絶望。
タケルの身体に吸い上げられていく魂の幾つかがぶつかる。しかし、タケルにはどうすることもできない。
タケル「命が……思いが消えていく。思いが……未来が消えていく。ごめん、皆……俺は皆の未来を守れない。思いを繋げてあげられない……」
もう、こんな人間の未来をみたくない。思わず目を閉じたタケルの脳裏に、またあの声が聞こえてきた。
優しくタケルの名を呼ぶ女性の声。まさか、母さん?タケルは懐から、真っ赤な眼魂を取り出した。父さんが、己の魂の消滅と引き換えに授けてくれた闘魂ブースト。
その眼魂をみつめると、妊娠した大きなお腹を抱えた優しげな女性と、仲睦まじく寄り添う龍の姿が、タケルの脳裏に浮かび上がってきた。彼女は膨らんだお腹を愛しげになでている。
母親『お母さん、あなたが生まれるのが楽しみよ』
龍『なあ、男の子だったらタケルという名前はどうだ?』
龍は目を輝かせて、お腹の子の名前を提案する。我が子にもうすぐ会えるのが、楽しみで仕方がない様子。が、その幸せは長くは続かなかった。タケルを産み落としてすぐに、母親は病の床に臥せった。枕元で、龍は悲痛な面持ちで座っている。しかし、母親は笑っていた。最期の時でさえ、生まれたばかりのタケルの頬をなでて幸せそうに笑っていた。
母親『タケル……生まれてきてくれてありがとう』
母親の死を見届けたタケルの脳裏に、母の笑顔が焼き付いた。
タケルに母の記憶はない。もしかしたら、龍から生前の母のことを伝え聞いていたかもしれないけれど、それでも確証はなかった。自分を産み落として、すぐに亡くなった母。自分を産んだことが、母の体力を奪い、死に追いやったのかもしれない。そんな自分のことを、母は本当に愛してくれていたのか?タケルが抱えてきた不安を、母の笑顔が溶かしていく。
タケル「母さん、最後まで俺のことを……」
ふと気づくと、タケルのすぐそばに龍が立っていた。龍の魂は消滅してしまったはず。だから、これはタケルの心が創り出した幻。わかってる。でも話しかけずにはいられない。
タケル「父さん……俺、愛されていたんだね」
幻は頷いた。
タケル「俺、父さんと母さんの子供でよかった。これからもずっと……」
幻は再び頷くと、静かに消えていった。
タケルは確信した。
タケル「俺がここにいる事こそ、父さんと母さんの愛の証。その愛は……俺の中で生きている。愛は、命を生み出す奇跡の力だ」
愛する気持ちに反応したムゲン魂が、光り輝いた。
タケル「俺は思いの力を信じる。愛の力こそ、人間の無限大の可能性そのものだ!」
タケルの胸に、愛しい仲間達への想いが去来する。アカリ、御成、マコト、カノン、シブヤ、ナリタ、アラン……タケルはたくさんの人達の笑顔を力にして、光の巨人に突っこんでいった。
タケル「人間の想いの力を知らないお前に、本当の想いを……愛の力を教えてやる!」
ムゲン魂の最終必殺技、ラブボンバーが炸裂。日本語に直すと愛の爆撃機。愛が地球を救う。文脈上、意味としちゃ間違ってないが、カタカナ字面の破壊力半端なし。Gガンダム最終必殺技、ラブラブ天驚拳に通じるものがちょっとある。
果たして光の巨人は、ラブボンバーの前に消え去った。ムゲン眼魂もその役割を終え、タケルのもとから消え去った。
光の巨人が消えるのを見た仲間たちは、タケルのもとへ駆けつける。しかし、そこには巨人のコアになっていた、ガンマイザーに乗っ取られたままのグレートアイも倒れていた。グレートアイがゆっくり動き出した。が、マコトもアランも先程巨人に弾き飛ばされたせいで、ひどい怪我。まだ戦える状態ではない。
マコト「俺たちはタケルを信じている」
アラン「私達のぶんまで頼む!」
グレートアイの攻撃を英雄ゴーストたちが防ぐ中、全てを託されたタケルは懐からゆっくりオレ眼魂をとりだした。
タケル「俺は……いや人間は……何度でも立ち上がり、運命を切り拓く!」
タケルはゴースト・オレ魂に変身すると、今まで共に戦ってきた15人の英雄達とともに敵に向かって走り出す。仲間たちはタケルの最後の活躍を頼もしく見守った。
アカリ「自分より人のことばかり思いやって、何度も消えそうになったけど……」
御成「その度に強くなって、戻って来られた」
アカリ・御成・カノン・マコト・ナリタ・アラン・シブヤ「タケルは、私(俺)にとって英雄だ!」
そして英雄たちも戦いながら口々にタケルに最後の言葉を。怒涛の関智一ひとり大英雄祭もこれが最後の開催。
ムサシ「決して折れぬ心で!」
ロビン・フッド「お前の正義を貫け!」
ビリー・ザ・キッド「お前はお前らしく!」
フーディーニ「今こそ思いを解き放て!」
サンゾウ「これぞタケルの信念ー」
グリム「楽しさが無限大に広がる世界に!」
ツタンカーメン「タケルを信じて!」
ニュートン「今こそ力を合わせて戦おう!」
ベートーベン「攻撃の完全なるハーモニー♪」
ゴエモン「我らに負ける選択肢は無い!」
エジソン「コレガ、我ラノ見ツケタanswerデス」
ヒミコ「我らを束ねたその力!」
リョウマ「人の思いが繋がったどでかい力ぜよ!」
ベンケイ「我らも信じる道をゆく!」
ノブナガ「タケルとともに最後まで!」
微妙なところもあったけど、15人連続でよくぞ演じ分けきった!お疲れ様!15人の英雄達とタケルの攻撃のお陰で、ただでさえ弱っていたグレートアイの身体がよろめいた。
タケル「命を燃やし尽くして生きた英雄たちと、父さんやみんながいてくれる!俺も……命を燃やし尽くす!俺は俺を信じる!」
英雄達の身体が光り、空に浮かび上がった。英雄たちと気持ちをひとつにしたタケルは、ライダーキックでグレートアイに突っこんでいく。
グレートアイ「あり得ない!人間とは……」
タケル「命、燃やすぜ!」
キックはグレートアイに命中。グレートアイは大爆発を起こした。
そして、ガンマイザーの呪縛から解放されたグレートアイが炎の中から飛び出して、空に大きな光の曼荼羅を描き、15人の英雄ゴーストがそれを支えた。
タケルの身体が曼荼羅の中に吸い込まれていく。11話でカノンを生き返らせてもらった時と同じ。英雄ゴースト達の力を借りて、グレートアイとタケルは再びコンタクトした。
曼荼羅の中には、フレイヤが立っていた。どうやら彼女はグレートアイの意思を伝える憑坐(よりまし)のような存在だった模様。
フレイヤ「天空寺タケル、助けてくれてありがとう」
タケル「願いを聞いてくれる?」
フレイヤ「ずっと、あなたを見てきました。あなたは、私たちに近い存在に進化をしています。多くの魂が結合している、不滅の存在です。もはや生き返る必要などないでしょう?」
やはりタケルは既に神のような存在になっていた。何度も魂ごと消滅しかけた経験を通して、死に対して悟りをひらき、多くの魂の声をきき、人間の大切な感情をムゲン魂を通して理解し、両親の愛を実感することで自らがこの世に存在する意味を知った。
肉体を持たないのに消えることのなかったタケルは、既に魂が消滅する危機を乗り越え、死の恐怖に怯えることなく、永遠に若いまま、この世に実体に近いかたちで存在することができる。
しかし、タケルはそんな自分の状態を悲しんでいた。
タケル「俺は普通の人間に戻りたい。みんなとご飯が食べたいし、みんなと一緒に笑って、一緒に悩んで……みんなと一緒に生きたい」
タケルは神になんてなりたくない。一緒に年を重ねていきたい人達がいる。彼らと小さなことで喜んで、小さなことで泣いて。傍からみれば他愛のない幸せは、命が有限であるからこそ輝く。
フレイヤ「それが、あなたの望みなのですね?だとすると、私のやった事は……」
グレートアイは、眼魔世界の大帝アドニスの強い願いに共感して、誰も死なない理想の世界を叶える手助けをした。しかし、それは間違いだったのかもしれない。が、タケルは別の願いを叶えて欲しいと申し出た。
タケル「でも、頼みたいことは別のことなんだ!」
フレイヤ「生き返りたい……のではないのですか?」
タケル「ガンマイザーに消された人たちを元に戻してほしい。こっちの世界も、眼魔の世界も」
フレイヤ「壊された街も……ですか?」
タケル「ううん、それ以上のことは望まない」
フレイヤ「なぜです?」
タケル「自分たちでやるから。人間の可能性は無限大なんだ。命と人の思いが繋がって、未来をつくるんだ」
タケルは最低限のことしか願わなかった。アカリが物語中盤で提案したように、願い事を5つに増やして、あれもこれもとお願いすることだってできただろうに。自分の手ではどうにもならない人間の命だけを望んで、ゴーストのままでも存在できるタケル自身の命や、皆で力を合わせればできる街の復興は神頼みしないあたり、神の存在に近付いたタケルらしい。
フレイヤはにっこり笑った。
フレイヤ「分かりました。願いを叶えましょう」
フレイヤの姿が消え、いつの間にかグレートアイの声が、本来のあどけない少年のものに戻っている。街の中に、消えた人々が次々と戻って来た。タケルはグレートアイに礼を言う。
グレートアイ「人間もいいものですね。私も、人間の無限の可能性を信じてみたくなりました……。これは、お礼です」
タケル「お礼?」
タケルの前に金色に輝く人型が現れた。それは人のことを優先して、自分の命を欲張らなかったタケルへのご褒美。
グレートアイ「またいつの日か、近くて遠い未来に会いましょう」
グレートアイは羽根の生えた巨大な黄金色の眼球に姿を変えると、宇宙の彼方へ飛び去っていった。
すると、世界にまたもや変化が起きた。生き返ったキュビ達やユルセン、仙人達の姿が眼魂に変わって消え、眼魔世界のカプセルに眠る生身の肉体が、次々に目覚め始めた。キュビもちゃんと生身の人間に。
眼魔世界はきっとこれからが大変。今までいらなかった食料調達や、赤く染まった大気のクリーニングなど、問題は山積み。
しかし、皆が目覚めるのを見届けたアリアは笑顔になる。命さえあれば、きっと問題を乗り越えていける。大帝アドニスがそうしたように、新しく全てを一からやり直す。きっと大丈夫。
そして、なぜか仙人のカプセルは大天空寺に保管してあり、こちらの世界で仙人は目覚めることになった。
仙人「あれ、どうして体が元に戻ったんだ?そうか、グレートアイが消えて眼魂システムが機能しなくなったんだ!あっ、腰が!どうする、ユルセン?」
足元の太った猫が知るか!とでも言いたげににゃあと鳴いた。なんとユルセンは猫の魂の化身でした!あら可愛い。
仙人は年をとった生身の身体に戻って、その重い腰に少々当惑気味。そりゃ何百年も動かしてない身体じゃ節々も痛いだろうて。
そして、タケルにも変化が。グレートアイの置いていった人型にタケルが吸い込まれると、タケルもなんと生身の身体に戻った!同時に曼荼羅が消滅し、タケルは上空から落下。わ、せっかく生き返ったのにまた死んじゃう!と慌てるタケル。が、英雄ゴースト達がタケルの手をとって、しばしの空中遊泳を楽しむと、無事に地面へ着地させてくれた。
タケルに駆け寄り、生き返れたのかどうかを心配するアカリたち。が、すぐにタケルのお腹が盛大にぐーっと鳴って、皆を笑わせた。大丈夫!間違いなくタケルは生きてる!
タケル「俺……お腹がすいたー!」
大天空寺に戻ったタケル達を仙人とユルセンが出迎えた。
タケル「おっちゃん、ただいま!」
仙人「おかえり、タケル」
タケル「生き返った!」
仙人「よかったよかった。全てはわしの思惑通りじゃ」
アカリ「嘘だあ!」
なにをしれっと言ってんだか。眼魂システムが機能しなくなった以上、眼魔世界に戻ることもかなわんだろうし、これから仙人は大天空寺の食客として生きていくんだろうか。おっちゃん、あんたの作ったガンマイザーシステムが街をぶっ壊したんだから、とりあえず反省しろよ、反省。ユルセン猫は可愛いので、そのままのびのび大天空寺に居てもらってよし。
そしてタケルは。
御成「タケル殿、おにぎりですよ」
タケル「おにぎり!いただきます!」
御成が差し出したおにぎりに美味しそうにかぶりつく。198日ぶりのごはん。海苔をまいた質素なおむすび。口のなかに甘い米としょっぱい塩の味が広がる。さいっこーに美味い。きっとタケルはこの味を死ぬまで忘れない。
『人間は、いつ死ぬか分からない。でも、最後のその時まで……命、燃やすぜ!』
タケルは米粒とともに、生きている幸せを噛み締めた。
当初に示された目標どおり、15人の英雄と心を繋いで最後にタケルが生き返るという大団円でもって、物語は終幕。
不老不死は人類が望む不変の欲望。人々はそれを追い求め、時には少女の生き血をかき集めたり、人魚の肉と称されるインチキ肉を大枚をはたいて買い求めたり、猛毒の水銀を若返りの妙薬と信じて飲んだり。しかし、そこまで命懸けで追求していっても、現在に至るまでその夢は叶えられることはありません。
でも、不老不死ってそんなにいいものなの?
『仮面ライダーゴースト』では、不老不死を実現させた眼魔世界という架空の国を描くことで、永遠に続く命が実はそんなにいいものではないかもしれないよ、ということをわかりやすい語り口で示してくれました。
そして、完璧主義に近い理想を実現させようとすると、人々の多様なあり方をゆるさず、最終的には独裁国家社会を作っていくこともキチンと描いてくれました。
そして、主人公サイドでは、命とはどういうものなのかが、がっつり語られていきます。物語の中盤で、死という概念を知らなかったアランが、ふみ婆の死を通して、身近な人の死というものをどう捉えていくべきか視聴者に感覚的に理解させました。
そして、最後におにぎりを頬張るタケルの顔を最高に幸せそうに見せることで、生きていることの素晴らしさを理屈抜きで見せつけました。
生死の概念を理屈ではなく、感覚で子供達に伝えようとした試みは見事だったと思うし、たぶんそこは成功していたと思います。
しかし、全体の語り口をみると、後半は主人公の感情の流れがブツ切れになってしまったり、伏線を引っ張るタイミングと消化するタイミングがぐちゃぐちゃで、けっして上手なストーリーテリングであったとは言えません。また、ゴーストであるが故に、敵も味方も死んでは生き返りを繰り返し、命の重みを伝える物語のはずが、かえって軽くみえてしまったことも否めません。
たぶん1~2クールで、製作サイドが言いたいことはほぼ全てまとまってしまっていたので、後半3~4クールは蛇足だったのではないかと。改めて1年というスパンで物語を紡ぐことの難しさを考えさせられました。
ちょっとここらへんまだ考えがぐちゃぐちゃしているので、最終回特別編を見てから、もう一度まとめてみようかなと。生死に関わる物語なので、割合こちらも感想を言うのに慎重になっています。特別編って、毎年ただのおまけで終わらなくて、侮れない。見た後にがらりと本編に対する考え方が変わることもあるので、楽しみです。