レオ「おい!何してやがる!!」
街で見かけたむっさい不良学生達が、小学生の男の子を人気のない倉庫に連れ込むのを目撃した大和達。慌てて後を追いかけるも、レオの一喝で、不良学生達はさっさと逃げてしまった。
大和「大丈夫?なにされた?」
ジュン「お小遣い……カツアゲされた……」
高校生が、小学生から小遣いカツアゲなんて……と眉をひそめる諸兄も多いとお見受けしましたが、あの不良達ねぇ……もしかしたら、高校生じゃないかもしれない。
昔ね、学習雑誌『小学5年生』に連載されていた『うわさの姫子(作・藤原栄子)』という少女マンガがあってね。主人公が小学5年生女子でね、彼女の恋のライバルである同級生の美人女子・笠井さんが不良学生に誘拐されてね、返してほしければ河原で決闘しろってことでね、主人公が憎からず思っている小5男子が助けにいくって展開でね。で、その不良学生は決闘でチェーンなんかをぶんぶん振り回しちゃってね、長ランでね、長髪でね、頬に傷があってね、身長が180センチぐらいあってね、最後に「命だけは大切にしろよ……」とか抜かしちゃう、とってもニヒルで気障な奴だったんだけど、そいつ、中学生だったのね。
だから、この不良たちも中学生に違いないって、私、信じてる動物戦隊ジュウオウジャー第40話感想。
まあ、高校生だろうが、中学生だろうが、小学生だろうが、社会人だろうが、カツアゲはいかんです。はい。
というわけで、レオくん、小学生男子に、本当の男の強さとはなんぞやと教えたでござるの巻。そしていよいよクバルが、本格的にデスガリアンに牙を剥きます。おおう、メインイベントきたーっ!!
*レオとジュン
今日も元気にデスガリアン登場。いち早く駆けつけたレオは、背中に「亜座留怒」の刺繍が入った長ランを粋に着こなしたブラッドゲームプレイヤー・キルメンチと、いきなりメンチを切り合うことに。
キルメンチ「俺はチーム亜座留怒の火の玉ヤンキー、"ボンタン狩り"のキルメンチ!」
レオ「なんだボンタンって!?」
キルメンチ「てめえ履いてんだろうが」
レオ「あぁ?これぇ!?」
キルメンチ「いいから寄越せや」
レオ「なんでやんなきゃいけねえんだよ!?」
キルメンチ「ああん?喧嘩売ってんのか、てめえ!?」
レオ「売ってんのは、おめえだろうがよ!」
キルメンチ「うっせえ、タコが!」
レオ「タコじゃねえよ、ライオンだよ!」
ぎりぎりと睨み合うふたり。3時間かけたという、キルメンチの金髪リーゼントがカッコいい。
が、レオにはキルメンチ言うところの『ボンタン』の意味がわからない。ついでに、それを寄越せと言う意味もわからない。テレビの前のよいこ達にも、さっぱり意味がわからない。そりゃーまー、今時ボンタン狩りといわれても、わからんだろうて。不良達の間では、いつぐらいまでこの風習あったのかしらねえ?
レオの強力なクロスカウンターで、キルメンチが一旦撤退したあと、レオに質問された大和はちょっと困りぎみ。テレビの前のよいこのお父さんお母さんも、さぞかし困ったことであろう。
レオ「ボンタンってなんだ?」
大和「あー……うん、な、なんていえばいいんだろう? やんちゃな学生が履いているズボンなんだけど……」
操「ああ、ほら、あれのことだ」
大和「あーそう、あれ……て、やばくない!?」
みれば、ボンタンをはいたやんちゃな不良学生が、男の子、ジュンをどこぞに連行している真っ最中。慌てて皆で追いかけるも、ジュンはお財布を不良に取り上げられてしまった。皆で不良のところに行って取り返しちゃえば簡単、とも思ったが、そこは操が反論する。
操「それでは根本的な解決にならないぞ……また、本人に仕返しがくるかもしれない」
アム「あー、そういうのありそう……」
うーむ、みっちゃんの発言がけっこうリアル。学校でいじめを受けてきたクチなんだろうな。これねえ、先生に相談しようかするまいか、ものすごく悩んだことが私もあるので、よくわかります。そのときは正義感の強い友達に職員室に強引に引っ張って行かれて、彼女が率先して先生に窮状を訴えてくれたので助かりました。状況にもよるので、相談することが必ずしも正解であるとは思わないけど、あのときはそれでいじめはおさまりました。今でも彼女には感謝してる。Mちゃん、ありがとうね。
おっと、話が逸れた。元に戻します。レオはジュンに問いかける。
レオ「ジュン! お前が決めろ。どうしたい?」
ジュン「カツアゲされるのは……僕がビビりだから……自分で取られたものを取り返せる、強い男になりたいです……」
考えながら、ゆっくり言葉を紡いでいくジュン。その様子に本気を感じたレオは、彼をとっくんに連れ出す。が、その場所は切り立った崖の上。
レオ「俺の一族に伝わる鉄板の修行だ。これやれば、もうどんなやつでも絶対強くなるぞ」
タスク「まさか……獅子を千尋の谷に突き落とすやつか?」
レオ「おう、正解!!」
ああ、やっぱりレオのおうちにはそんな風習がorz。他にも巨大な岩を持ち上げて走ったりとか、ジューマン寄りの発想が続く。ニンゲンのこどもには不可能な提案ばかり。ジュンに、岩を持ち上げられるんですか?と訊かれて、おずおず頷くセラちゃんが脅威。やはりジューマンは敵にまわすもんじゃないのう。
結局、アムがニンゲンにとっての常識的なトレーニングを提案して、地道なとっくんを。腹筋やジョギング、卵飲み。うんうん、強いボクサーになるには、どれも外せないとっくんだねえ……て、ボクサーになるのか?
レオ「いいか、ジュン。年上に腕っぷしで勝つのは難しい。だからせめて、気合で勝て! そうすれば勝機はみえる」
ジュン「気合はどうしたら鍛えられるんですか、兄貴?」
レオ「全身で表現すんだ! 声を出せ、声を!!」
果たして、不良グループのたまり場に財布を返してもらうべく乗り込んだジュンは、大声で不良どもを威嚇。加えてひっそりレオがライオン姿で天から降りてきて、思いっきり威嚇。レオジューマン姿、結構ひさびさに見た気がする。そして操をはじめとする、レオを釣り糸で支えた操演の皆様、お疲れ様です。
突然の怪しいライオンにびびって、ジュンに財布を返して逃げ出す不良たち。これにて一件落着か? と思いきや、ジュンの目が不穏な色を帯びた。ジュンは拳を握ると、逃げ遅れて完全に腰が抜けた不良君に襲いかかろうとする。が、レオが彼の拳を摑んで止めた。
レオ「……おい、何しようとした」
ジュン「たくさんひどいことをされてきたんだ! ちょっとぐらいお返ししてもいいじゃないか!」
レオ「いいわけねえだろう! お前は強くなんかねえ! 強くなる資格もねえ!」
ジュン「兄貴にはわかんないよ!!」
ジュンはレオの手を振りほどいて、走りさった。不良達をビビらせるくらい強くなったのに、なんで今までの仕返しをしちゃいけないんだ……?
悔しい気持ちを抱えて、とぼとぼひとりで歩くジュンの前に、さきほど逃げた不良君が親しげに話しかけてきた。お前は強いとジュンを褒め称えながら、レオを痛い目にあわせるよう唆かす。
不良「わからせてやれよ、あの兄貴ってやつに。あいつに勝って、お前は強いってことを証明してやるんだ」
ジュン「ええ……?それはさすがにできないよ」
不良「ああーできるさ、お前なら!……これを使えば、勝てるぜ?」
渡されたのは、妙なロボットハンド。あの不良だって、僕の強さを認めてくれたんだ! 僕は強いんだ! ジュンはそれを右手に嵌めると、レオに勝負を挑む。
ジュン「僕は強くなった……それを認めてくれない兄貴なんてもういらない。僕と勝負しろ!」
レオ「勝負か……わかった、こいよ」
勝負と言っても、レオは手を出さない。ジュンの拳を腹でしっかり受け止める。鍛えたとはいえ、ニンゲンのこどもの付け焼き刃、たかが知れている。この1発を平然と受け流すことで、ジュンの思い上がりを諌める……はずだった。
レオ「全然効かねえなあ……」
ジュンの頭を撫でようとするレオの身体に、突然しびれが走った。先程ジュンが殴ったところから全身に酷いダメージが広がる。何が起きたのか? 折悪しくキルメンチが現れ、レオに再びタイマン勝負を挑む。身体が自由に動かないレオは、キルメンチにぼこぼこに。その様子をみていた不良君は、ジュンの心根を高らかに嘲笑った。
不良「お前のせいだ。俺らをビビらせることができたのも、そいつが手助けしたからだってのによ。自分が強いと勘違いしたお前のせいで、そいつは死ぬんだ!」
兄貴は親身になって助けてくれたのに、こっちが喧嘩を仕掛けても手を出そうとはしなかったのに、僕があいつの変な口車に乗って兄貴を殴ったせいで、兄貴がぼろぼろになってる。ジュンは泣きそうになりながら、レオに問いかける。
ジュン「僕のせい?僕が殴ったから?」
レオは答えない。レオの意地にかけて、こどものせいになんかできない。ジュンは姿勢をただすと、精一杯頭を下げた。
ジュン「ごめんなさい!」
レオ「わかりゃいいんだよ!」
レオは破顔一笑。気持ちはジュンに伝わったかな? レオは嬉しそうに、ジュンの頭をグリグリなでた。ジュンに本当の男の強さを見せなければ! レオは奮い立つ。
レオ「相手を殴ると自分も痛え……だから、拳ってぇのは相手を傷つけるために使っちゃいけねえ! 拳ってのはな、守るために振るうんだ!!」
レオは立ち上がると、再びキルメンチと拳を交える。レオはキルメンチの拳を額で受け止めると、そのまま前にずいっと踏み出して、アンダーから拳を振り上げた。
レオ「それが……男の美学だぁぁぁー!! 」
見事なアッパーカット!レオとサシでやっても勝てないと感じたキルメンチは、メーバを出してくる。しかし、レオ側もジュウオウジャーの面々が駆けつけ、河原で大乱戦。河原、素敵です。いかにも昭和の不良同士の決闘場です。乱戦のなか、キルメンチの根性とレオの気合いがぶつかりあう。うむ、河原の美学。よっしゃ、いけー!
オーバーキルなジュウオウファイナルで倒され、巨大化しても、ヤンキー座りでメンチ切ることを忘れないキルメンチが素敵。しかし、ワイルドトウサイドデカキングはキルメンチの攻撃を仕掛けても、全くびくともしない。
キルメンチ「もしかして……効いてねえ?」
ジュウオウジャーの皆様「全く」
これじゃ勝負にならん。レオはいきなり自分のキューブをぐりぐり回すと離脱!
レオ「てめえみたいなタコ!これで十分だ!」
完成、ジュウオウキングオクトパス!セラ、大和がむりくり巻き込まれて、席からはみ出しちゃってるし!
そんなこんなで、だいたい力が互角になったところで、レオは気持ちよーくキルメンチと殴り合い。男の美学はわかるけど、ちーとばっかりめんどくさいのう。
レオ「オクトパスジュウオウ斬り!」
無事、キルメンチを撃破。無理矢理付き合わされたセラは、レオの頭に1発お見舞い。
セラ「このタコ!」
レオ「タコじゃねえよ、ライオンだよ!」
大和「たーこ!」
大和もちゃっかり便乗。まあ皆楽しそうにじゃれてて、よかったよかった。
戦いが済んだあと、ジュンの嵌めていたロボットハンドを手に、タスクは考え込む。
レオ「それ、いったいなんだったんだ?キルメンチは知らないみてえだったぞ?」
タスク「プレイヤーとは別に、動いていたやつがいたのかもしれないな……」
見えないところで、またデスガリアンとは別の敵が動き出している? タスクは不安げに、ロボットハンドをみつめた。
というわけで、レオの『男の美学』をがっつりと。本当に強い男は、自分や他の誰かを守るために力をふるう以外はむやみやたらに拳をふるわない、必要以上にやり返さない。……てことを言いたかったのですが、そのあとの巨大戦のパワーバランスが悪かったりで、にんともかんとも説得力が……(^_^;)。そもそも戦隊というのが、敵を倒すこと前提で話が成り立ってるから、こういう話を成立させるのは難しいのう。
ただ、必要以上にやり返さないっていうのは、とても大切なことなんじゃないかなあと、ここ最近はとくに強く思います。
今回もしジュンが、戦意喪失して無抵抗な不良を殴ってしまっていたらどうなったのかな? とちょっと考えます。その場では確かに、スッキリするかもしれない。
でもそれって、イジメられてた子がいじめる側に転じて、溜飲を下げるのと同じことなんじゃないかな? とも思う。被害者が一転して加害者になる構図。それじゃ結局、ジュンも不良とやってることは変わらない。やられた不良はジュンと同じように悔しいと思って、必ず仕返ししてくるだろうし、そうすれば泥仕合になる。
やっぱりジュンはあそこで殴らなくて正解だったと思う。悔しい気持ちは痛いほどわかるけどね、でもその悔しさに耐えることができるのが、本当の強さなのかな?とも思います。
*デスガリアン
ジニス「ナリア、どうした?」
アザルドがキルメンチに総長扱いされて、上機嫌で作戦を進める中、ナリアの顔色は冴えない。ジニスはやさしく問いかけた。
ナリア「クバルの姿がみえません」
ジニス「ふふふ……そのことか」
ナリア「放っておいて、よろしいのですか?」
ジニス「構わないよ?それより、もう一杯、もらえないか?」
ぞくぞくするほど甘く穏やかな声で、酒のおかわりを求めるジニス様。ああん、素敵……。しかしナリアは、クバルの不穏な動きを全く気にしていないかのようなジニスの様子に、一抹の不安を感じる。
ジニスの真意はナリアには読めない。が、彼の秘書としてのプライドがうずいたナリアは、クバルを密かに追跡して、クバルが何をやっているかを知った。
クバル「この星のやつらは何を考えているのか……それを利用すれば……」
今回の作戦の影で、ジュンを唆して特殊なロボットハンドで殴らせるよう仕向け、レオをピンチに落としたのはクバル。彼は不良の記憶から、『バングレイの右手』を使って本人のニセモノを取り出して、どういうふうに命令を遂行するのか、試していた。
ナリアの銃撃が、不良のニセモノを砕く。
ナリア「下等生物を使って、何を遊んでいるのかと思えば……その右手、バングレイの能力を奪い取ったのですね?」
クバル「人を尾けるなんて、趣味が悪いですね」
ナリア「あなたが以前から、何かを企んでいることはわかってました。正直に白状なさい」
ナリアはクバルに銃口を向ける。
クバル「私も疑われていることはわかっていましたよ?」
クバルは懐から銃を取り出すと、見事な早撃ちでナリアを狙う。しかし、ナリアは素晴らしい身のこなしで、弾を全て避けると、クバルに向けて弾き返した。被弾して、よろめくクバル。
ナリアはクバルに向かって、1歩足を踏み出した。が、そこにはトラップが。照明弾を浴びて一瞬目が眩んだ隙に、驚くべき速さで、クバルはナリアの間合いに入ってきた。
ナリアの目の前に麻酔銃を突き出すと、そのまま頭部に弾をぶち込む。ナリアは意識を失うと、そのまま仰向けに倒れ込んだ。
クバル「おやすみなさい、ナリア?」
横たわるナリアの頭部に、クバルはそっと『バングレイの右手』を添える。彼女の記憶から、クバルは何を実体化させようとしているのか?
アザルド「ナリア! コンティニューだ! あ、あ……どこいった、ナリアー!?」
そしてアザルドさんは、せっかくのブラッドゲームを誰にも鑑賞されていないという悲劇。ナリアどころか、ジニス様も居なくなっちゃってるよ。哀れ。まあ、むっさい男子のズボンをたくさん集められても……ねえ?地球は滅びないわ……ねえ?
サジタリアークのメインデッキにうず高く積み上げられたズボンの山に、一抹の汗臭さと寂しさを感じます。誰かアザルドさんにも、状況を説明してあげてぇ……。